第46回日本カトリック映画賞授賞式&対談 5/21 浅草教会

46回日本カトリック映画賞授賞式が、2022年5月21日(土)カトリック浅草教会(東京都台東区)にて行われました。
授賞作品『梅切らぬバカ』和島香太郎作品 公式サイトへのリンク https://happinet-phantom.com/umekiranubaka/

2020、2021年に続いて今年も非公開での授賞式および和島香太郎監督と晴佐久昌英神父(シグニスジャパン顧問司祭)の対談が行われました。映画のタイトルと合わせたかのような美しい庭の梅の木を背景にして、お二人が穏やかな雰囲気で語り合いました。監督がこの映画を撮るようになったきっかけ、どのようなことを大事にされてきたか、また晴佐久神父の著書「福音家族」について興味を持たれたことなど伺うことができました。尊敬する方として佐藤真監督のお名前を挙げられましたが、佐藤監督の『阿賀に生きる』(1992年)http://kasamafilm.com/aga/ は、第17回日本カトリック映画賞授賞作品であり、30年の時を経た不思議なつながりを感じました。次の作品も大変興味深く、私たちシグニスも心から応援したいと思います。

授賞式および対談は、You Tube にて公開されました。こちらからからご覧いただけます。
文字でお読みいただけます。PDFファイルが開きます。 授賞式 / 対 談

 


梅切らぬバカ 授賞にあたって シグニスジャパン顧問司祭 晴佐久昌英

「ともだちだから」

 この地球で人類が繁栄した最大の理由は、「互いに助け合う」という特徴にある。それは、助け合えなくなれば人類に未来はないということであり、コロナのパンデミックによって明らかになった現代社会の最大の問題点も、そこにある。経済最優先という強者の論理で弱者が切り捨てられる現実の中で、わたしたちはどうすれば本来の助け合う力を取り戻せるのだろうか。
 このところ、コロナの時代にあって映画に何ができるのか、ましてや映画賞を選定することにどんな意味があるのかを、ずいぶん考えさせられたし、話し合っても来た。疲弊した世界は今、どんな映画を必要としているのだろうか、と。
 そんなわたしたちを励ましてくれたのが、「珠子と忠さん」親子である。母親の珠子は、50歳になる自閉症の息子の忠さんと二人暮らし。このままでは共倒れになると、珠子は忠さんを近所のグループホームに預けようと決心する。しかし、近隣の住民たちはグループホームを排除しようとするし、忠さんもホームになじめない。現代社会の縮図のような閉ざされた状況だが、現れた小さなともだちのおかげで、二人の世界が開き始める。
 映画の中で母親の珠子が「だって忠さんのともだちだから」と言った時、ああこれだ、今の世界に必要なのは「ともだち」なんだ、と気づかされた。血縁でもなく、福祉でもなく、人類が助け合う基本構造としての、ともだち。一緒にご飯を食べ、困った時には頼りになる、いてくれるだけでうれしい、ともだち。もしかすると、先に逝く親が子供に与えることのできる最高の贈り物は、ともだちなのかもしれない。
 映画を観終えて何よりうれしかったのは、この自分もまた忠さんのともだちになっていたことだった。そうか、世界を救うには、人類がみんなともだちになればいいんだ。みんなともだちになって、街全体がグループホームになればいいんだ。映画を作ってくれたみなさん、魅力あふれる忠さんをともだちにしてくれて、ありがとう。きっと、映画が観客に与えることのできる最高の贈り物も、ともだちなんですね。
 映画には、互いに助け合うともだちを生み出す力があるし、そんな力を秘めた映画をこそ応援したい。コロナの時代に映画には何ができるか、どんな映画を選ぶべきかという問いにわたしたちが出した答えは、「梅切らぬバカ」である。