カトリック映画賞授賞式に寄せて 幸田司教様メッセージ

カトリック映画賞授賞式に寄せて

  – 2011年度授賞作品 「エンディング・ノート」-

人はだれでも必ず死にます。死ということは、人間にとってある意味でとても自然なことです。現代の科学や医療技術の目覚ましい進歩の中で、人間が全能であるかのように錯覚したとき、死は「あってはならないこと」、「単なる医療の失敗」と見られるようになってしまったのではないでしょうか。もちろん、あってはならない死がありますし、医療の発展も大切なことです。しかし一方では、だれも避けて通ることのできない死という現実から目をそらさず、死を前にしてぎりぎりまで何を大切にして生きるか、死に直面してどのような希望を持つことができるか、死を超えてなお信頼できるものは何か、そういう問いかけが今の時代だからこそ大切なのだと思います。

砂田麻美監督がお父上の最期に向き合い、映像を撮り続け、丹念に編集するという作業をとおしてわれわれに見せてくれたのは、お父上ご自身とご家族がどのように死に向き合い、死を受け入れていくかという物語でした。それは同時に、死はすべての終わりではないという物語でもあったとわたしには感じられました。

砂田麻美監督、カトリック映画賞にふさわしい、すてきな物語をどうもありがとうございます。
2012年5月12日

SIGNIS JAPAN顧問司教

 

幸田 和生